ジャスティスリーグ

ジャスティスリーグ 第45、46話「より良き世界」

まず始めに、この話のあらすじを簡単に説明しておきたいと思います。
現在の世界とは違う世界(パラレルワールド)に、ジャスティスローズ、すなわちジャスティスリーグにとても良く似たヒーローチームがいた。だがしかし彼らは、ふとしたきっかけからその「正義」を暴走させ、民衆の動きを管理し、犯罪が起きないよう圧迫していた。そして彼らが次に目をつけたのが、ジャスティスリーグがいるこちらの世界であった…。

細かい所は実際に見ていただければ解るんですが、かなり「深い」内容の話になっています。そして本エピソードに対して良く見る評論が「9.11テロ以後のアメリカの状況の風刺」というような内容です。
もちろんそれは確かにその通りだと言えるでしょう。ジャスティスローズ達が自分達の「正義」を別世界のジャスティスリーグ達に押し付け、いつの間にか「悪」になっている姿は、まさに現在のアメリカが抱えうる問題点そのものだと断定してしまって構わないと思います。
ただしかし、そこで一つの疑問がわきます。本エピソードで語れている「正義」とは一体何でしょうか?それについて考えてみたいと思います。

さて皆さんにお聞きしたいのですが、今回登場するジャスティスローズは果たして本当に「悪」なのでしょうか?彼らのやってきた事は、本当に間違った事なのでしょうか?
彼らは「犯罪」が起きないよう務めてきました。そのために人々の行動に制限をかけ、犯罪の芽を早い内から積んでいます。人々が抗議行動を起せないようにしておけば、最近中国で起こった反日デモのように、投石や暴力などの被害が起きる事もありません。
実際作中では、彼らの取った政策のためか、犯罪が頻発しているような描写はありませんでした。言ってしまえば、彼らのやり方は犯罪を減らすのには、極めて有効な方法だと私は思います。逆に言ってこちらの世界のジャスティスリーグのやり方は手ぬるいと言えるでしょう。それが証拠にルーサーやジョーカーは、何度も脱出し再犯を重ねているわけですから。

ですが、本エピソードではどう見てもジャスティスローズが「悪」であり、ジャスティスリーグが「正義」に描かれています。という事は「犯罪を減らす=正義」では無い、という事になります。もちろん犯罪を減らすという事は、正しい事なのですが、それが「一番大事な事」では無く、それよりも「大事な事」があるという事なのです。では「ジャスティスリーグ」という作品において「正義」とは一体何でしょう?リーグとローズの違いは一体何なのでしょうか?それを紐解く事は、実はアメリカそのものの「正義」について考えてみなければなりません。

アメリカという国は、もちろん他民族国家であり単純に断言は出来ないのですが、キリスト教国家であると言えます。さて単純にキリスト教といいますが、その大きな特色は一体何でしょうか?それはこの世界が、唯一絶対の造物主によって作られた、と教えている点でしょう。つまりこの世界にある全ての物は(悪魔すらも含めて)全てが神の創造物だという事です。という事は、全ての物は神の前では等しく同じであるわけです。ここから生まれたのが「万人平等」、すなわち「一人一票」という民主主義の大原則です。そう、民主主義というのは実はキリスト教と深い関わりがあるのです。

その考えが発展して生まれたのが権利、すなわち「人権」の概念です。「神によって与えられた権利は、誰もが持っており、そして他の誰にも奪い取る事はできない」という事です。権利とはつまりは「自由」の事です。生命の自由、行動の自由、結婚の自由、職業選択の自由などなどです。こうした概念が生まれる事により、民主主義思想が完成してきました。

結論を言ってしまえば本エピソード、いやアメリカに置いて一番大切にされている「正義」とはこの「自由」の事に他ならないのです。

ジャスティスローズ達は、犯罪を抑止するためとは言え、デモを鎮圧。これを厳しく取り締まり、二度とデモが起きないようにしました。これは「思想信条の自由」「団結する自由」に反する行動です。また犯罪者達に強制的に穏やかな心を植えつけていました。これは「思想の自由」に反します。他にも人々の行動を厳しく制限して、彼らの自由を奪っていました。
一方のジャスティスリーグはどうでしょうか?確かに犯罪者を捕らえても裁判などに回すだけで、徹底的にやっつけたりはしません。ルーサーなどは事もあろうに、刑務所から出た後に大統領に立候補してしまいます。しかしそれは、例え犯罪者と言えども彼らにも「自由に生きる権利」があるからです。だからと言って、他人の自由を侵害する権利だけはありません。そのような事態になった時にこそ、ジャスティスリーグは出動するのです。
犯罪の抑止という面から見ると、確かにローズがやっている事の方が正しいと言わざるを得ません。しかし「自由」という側面から見ると、明らかにローズの「正義」よりもリーグの「正義」の方が上位の価値となっているのです。

だからこそアメリカは「独裁者によって自由を奪われているイラク国民」を救い、自由を与えるためにイラクに対し武力行使を行ったのです。そうする事が彼らにとっての「正義」だからなのです。


アメリカの独立宣言に以下のような文章が書かれています。

「我々は、全ての人は平等に作られ、造物主によって一定の奪い難い権利を付与され、その中には生命、自由、及び幸福の追求が、含まれていることを自明の真理であることを、信じる」

本エピソードのラストにて、スーパーマンは悪人であるルーサーの協力を得て、ローズを撃退します。何故なら例え悪人に協力を得たとしても「自由」を守る事の方が大事だからです。
そして彼が最後に手にした物、つまり星条旗こそが、まさにアメリカの「自由のシンボル」なのですから。

(参考文献:井沢元彦「世界宗教講座」)

カートゥーンの事ならカートゥーン横丁