ジェニーはティーン☆ロボット

ジェニーはティーン☆ロボット 1〜8話まで

まず始めにお断りしておきますが、今回取り上げる「ジェニーはティーン☆ロボット」は、カートゥーンネットワークの作品では無く、ニコロデオンの作品です。

さて本作品は、日本上陸前から話題になっていました。
どういう風に話題になっていたかと言いますと、いわゆる「キャラクター萌え」で話題になっておりました。確かにジェニーは可愛いです。「パワーパフガールズ」から受け継がれたかのような、ちょっとした仕草、表情などは、見ていて和む事は間違いありません。
でも、それをもってして本作品を「萌えアニメ」と断じてしまうのは、少々乱暴な気がしますし、本質を見失ってしまうような気がします(もっともそれは、自分が「萌え」という物を理解してないだけなんですが)。という事でここでは自分なりに、この「ジェニーはティーン☆ロボット」という作品を論じてみたいと思います。

実際に「ジェニーはティーン☆ロボット」を見た所、まず第一にこの作品は実は「デクスターズラボ」や「パワーパフガールズ」「ビリー&マンディ」などに連なるカートゥーンの「正統なる後継者」なのだ、という印象を受けました。しかしこれは実はスタッフがかなりかぶっているからであり、それは仕方ない事なのです。でもそれを差し引いてもやはりそう思わざるを得ないくらいに、実にありふれたカートゥーンの王道といえる手法を取っています。「カートゥーン復興」と言ってもいいのかも知れません。

そして次に感じたのが、これが奇妙な事に「懐かしさ」なのです。初めて見るはずなのに、どこか懐かしい。それは何故か?まず考えられるのが、先にあげた「カートゥーンの正統なる後継者」だからである、という理由でしょう。キャラクターや背景のデザイン、そして話の展開などが正に王道カートゥーンのそれなのです。また全体の色調が薄い混色で統一されているのも、大きいかも知れません。

そして更に「懐かしさ」の大きな原因となっているのが、やはり日本アニメの、それも一昔前の日本アニメの影響でしょう。そもそもこの「ジェニーはティーン☆ロボット」という作品は、日常の中に非日常であるロボットのジェニーが入り込み悪戦苦闘する、という話であります。この「日常の中の非日常」というシチュエーションは、かの藤子・F・不二雄が最も得意とする所であります。
そして「日常生活の中にロボットが入り込み活躍する話」というのは、例えを挙げれば「ドラえもん」「ろぼっ子ビートン」「究極超人あ〜る」「Drスランプ」など、枚挙に暇がありません。
つまり我々日本人にとっては、普通に子供の頃より親しんだ世界なのです。それらの影響を受けているが故に、意図した物では無いにせよ、我々日本人は「懐かしさ」を感じる事が出来るのでしょう。

というように「ジェニーはティーン☆ロボット」は、間違いなく面白い作品であります。ただしかし、全く不満が無いというわけではありません。その不満とは「敵に魅力が乏しい」事でしょうか。同じスーパーヒロインを主人公とした「パワーパフガールズ」には、モジョジョジョやカレ、ギャングリンギャングスなどの多くの魅力的脇役達がいます。だがしかし「ジェニーはティーン☆ロボット」には、もちろんクラスターという大きな悪役はいますが、それ以外の所でのレギュラーとなる敵キャラクターは(今の所)見受けられません。一応、ブリットとティフというクラスメイトがいますが、彼女達の場合はジェニーが倒すべき「悪役」とは少し趣が異なっていると思われます。

自分が考えるに「ジェニーはティーン☆ロボット」において、いわゆる悪役の扱いは、例えば「パワーパフガールズ」のそれとはかなり違うように思われます。「パワーパフガールズ」において、悪役を倒す事はストーリーのメインであり、根幹を成しています。しかし「ジェニーはティーン☆ロボット」においてストーリーのメインは、実はジェニーの人間世界での生活であり、悪役を倒すという行為は実はそれほど重要な事では無いのです。その悪役退治を通じて、ジェニーと他の人間達がどう交流していくか、という事が重要なのであり、それ故に悪役は「ただいればいい」だけの存在となっているのです。つまり毎回登場して街を破壊する悪役よりも、ジェニーのハッピーな高校生活を邪魔する、例えばブリットとティフのような悪役こそが、実は本作にふさわしい悪役であると言えるのです。

現状ではどうも制作スタッフも「悪役」の存在について、もてあましている印象を受けます。街に出た巨大怪獣を倒す話よりも、例えば学校で起きた火事を消火する話や、パーティーに参加するために、あれこれ奮闘する話の方が「ジェニーはティーン☆ロボット」らしい話だという印象を受けます。

この辺りのポイントを、メインの敵であるだろうクラスターを絡めてどう処理していくのか?それがただの「パワーパフガールズの焼き直し」から脱却し、「ジェニーはティーン☆ロボット」なりの世界観を構築していく鍵では無いか?と思うのですがいかがでしょうか?

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