皆でラーメン屋に入る。当然ラーメンを食べるためだ。そしてラーメンを注文したのだが、出てきたのはなんとカレーライス。でもそれは店の主人が色々なカレーライスを食べて研究した結果出来た物であり、更にラーメン屋としての独自の味付けもしているという物。
皆はこれを食べて「美味い」とか「カレーとラーメンの融合とは意義があることだ」とか「まだ未完成だけど、これからに期待したい」とか言っている。
でも自分はこう言った。「自分はラーメンを食べたかったんだから、ラーメン出してくれ。っていうかカレーとしてもあんまり美味しくないし…」と。
以上が「ティーンタイタンズ」に対する、自分のスタンスだと思ってください。
「ティーンタイタンズ」と言えば今更説明するまでも無く、日本アニメ的手法を大々的に取り入れ話題となった作品です。そのため日本公開前から各所で話題になり、日本でも放映が始まってからは確実にファンを増やし、ヒットとなった作品であるのは言うまでもありません。カートゥーン関係の様々なサイトや掲示板では「タイタンズ面白い」「タイタンズ最高」などの意見や書き込みが溢れていました。
でも、いやだからこそ言いたいのですが、少なくとも自分にとっては「ティーンタイタンズ」は面白くなかったです。いや「つまらなかった」と断言してもいい。
もちろん放送前の期待が高すぎて、実際の作品とのギャップが生じてしまった、いわゆる「期待外れ」という側面もあります。またどうしても肌に合わない作品はあるものです。それはそれで仕方ない事でしょう。ただ「ティーンタイタンズ」の場合、なんだか「面白い」という意見ばかりが目立ってしまい、そういった意見がまるで出てこなかった、いや「言ってはいけない雰囲気」のような物を生み出していたように思えます。だからこそあえて言うのです。「ティーンタイタンズ」はつまらないと。
この作品の最大の魅力というか特徴は、「日本アニメ的な表現手法」だと言えるでしょう。キャラクターが突然二頭身になったり、多彩な漫符表現など、確かに従来のカートゥーンにはあまり見られなかった手法です。だがしかしそれらの表現が、どうも滑ってしまっているように見受けられます。例えばキャラの二頭身化も、なんでそこでなるの?というような、微妙にずれた所で起きてしまっています。その辺りは、そういった「日本アニメ的手法」にまだ慣れてないスタッフだからしょうがないのだ、と言えるかも知れません。でもそういった「ずれ」が一回や二回ならいいんですが、何度も何度も起きていて蓄積される事で、なんだか変なフラストレーションを感じてしまうのです。
同様の「ずれ」が、戦闘シーンにも見受けられます。従来の、例えば「ジャスティスリーグ」などの「重さ」を感じる戦闘シーンと比べると、どうしても「軽い」印象を受けてしまいます。それでいて戦闘シーンがだらだらと長く続いてしまい、結果としてタイタンズの面々が「弱い」という印象を受ける結果となってしまっています。なにしろたった一人の相手に五人で立ち向かっても苦戦してしまうんですから…。それに拍車をかけるのが音楽で、全体的に緊張感がありません。戦闘シーンの音楽も逆に緊張感を失くす結果になってしまっていると言わざるを得ません。
そしてなによりストーリー部分の作りがすごく「甘い」です。
例えば第8話「6人目のヒーロー」では、ストーリーのかなり前半部分で「今回の敵は分身の術のような物を使う」と解説しておきながら、後半ではその敵の術に翻弄されてしまい、味方同士で「ヤツはあっちだ!」「いや、こっちにいた!」とやり合ってしまうのです。これでは敵の分身術について、前半でわざわざ説明させた意味がありません。
そしてストーリーの「甘さ」を自分が一番感じたのが第9話「レッドエックス」です。
簡単にあらすじを説明しますと、この話では悪の親玉であるスレイドを欺き、彼に接近するために、ロビンが仲間にも秘密でレッドエックスという悪党に変装する、という話です。
勘のいい人なら、ストーリーの初期にロビン=レッドエックスだと気づいてしまうのですが、それにはとりあえず触れないでおきます。
ストーリーが後半になり、レッドエックス=ロビンはついにスレイドに近づくチャンスを得ます。だけどスタッフは、この時のスレイドとの通信の段階で、ロビン=レッドエックスというのを視聴者に明かしてしまいます。そのためにその直後にある、スターファイヤーがロビン=レッドエックスであるという「証拠」を見つけるシーンが、意味の無いシーンとなってしまっています。
更にその後、レッドエックス=ロビンという事は既にスレイドも気づいており、結果としてスレイドの罠にロビンが嵌る事になります。そのピンチを救いに来るのが、仲間のタイタンズ達なのですが、マヌケな事にその段階で、サイボーグ達はレッドエックス=ロビンであると「知りません」。つまりサイボーグ達は、あくまでもレッドエックスを追いかけて来ただけなのです。スターファイヤーは先ほど「証拠」を見ているわけなのですが、彼女はこの場所に来るまでに、仲間達にその事を全く話していなかったという事になります。これはもう大マヌケ以外の何者でもありません。
この一連のシーンは、例えば…
レッドエックスとスレイドの通信(まだ正体は見せないが、怪しい所は出しておく)
↓
スターファイヤーがレッドエックスの秘密に気付く(視聴者に「おや?もしかして?」と思わせる)
↓
スレイドとレッドエックス。だがスレイドがレッドエックスの仮面をはいで、視聴者にレッドエックス=ロビンをばらす。ロビンピンチ!
↓
そこへ事情を知ったサイボーグ達がかけつけてくる。
「なんで言ってくれなかったんだ!」くらいのセリフを言わせる。
…とした方が全然いいんでは無いでしょうか?これならば「仲間を信じられない」というテーマへ十分繋げる事が出来ます。
あるいは、スターファイヤーだけ遅れて入ってきて「実は…」と言わせる方がよっぽどいいのでは無いでしょうか。その際には、一人遅れて飛んでいる彼女のシーンを入れて「早くみんなに知らせなきゃ」などのセリフを言わせると、更に緊迫感が増すと思われますがいかがでしょう?
上で挙げただけでなく、全体的にストーリーに「意外性」が感じられません。先の展開が読めてしまう事が多々あります。例えば「デクスターズラボ」や「パワーパフガールズ」などの、純粋なカートゥーンでもそういった部分はあります。でもカートゥーンの場合は、作品がギャグだからというせいもあるんでしょうが、「先の展開が読める」という部分は得てして魅力になっています。しかしシリアスな「ティーンタイタンズ」でそのように「先の展開が読める」のは、あまり好ましくない事態です。
結論としては、タイタンズの制作スタッフが日本アニメ的手法に慣れていない、という事が言えるでしょう。上の問題の多くは、制作が進み、スタッフが慣れてくることで、解消できる問題です(最もシナリオに関しては、その後のエピソードのレビューなどを読むと、まだまだ「甘い」部分が見られるようですが)。
そう考えていくと、いわゆる「日本的アニメ手法」が面白く見えるのは、ほんのちょっとしたタイミング、間、動きなど全ての要因が「日本アニメ」の長い歴史の上に成立しているからであり、そしてそれは「日本アニメ」という土壌の上であるからこそ、正しく作用する物なのです。それを踏まえると「パワパフZ」のように、最初から日本で作ってしまって展開をさせた方がいいのでは、という事になってくるのでは無いでしょうか。
自分が期待していたものは、あくまでも「カートゥーン」でした。しかし出てきた物は「カートゥーン」では無く「日本アニメ」と「カートゥーン」の融合したもの。しかもそれは「カートゥーン」としても「日本アニメ」としても、中途半端な出来であった。それを見て「面白い」「カートゥーンーと日本アニメの融合とは意義があることだ」「まだ未完成だけど、これからに期待したい」という意見が多く見られる。でも自分はこう言った。「自分はカートゥーンを見たかったんだから、カートゥーンを見せてくれ。っていうかそれ以前にあんまり面白くないし…」と。
それが「ティーンタイタンズ」に対する、自分のスタンスです。