トランスフォーマーアニメイテッド エピソードガイド03

#8

「Nanosec」

Written by : MARTY ISENBERG
Art Direction : DERRICK J.WYATT
Directed by : MATT YOUNGBERG , SHUNJI OGA

あらすじ

メガトロンは自らのボディを作るために、サムダック博士の持つ「デストロニウム」という物質に目をつける。しかしその物質はとても不安定で、博士の研究所からサムダックタワーまで10分以内に持ってこないと、大爆発を起こしてしまうのだ。そこでメガトロンは、開発途中だった超高速で動けるサイバースーツを盗み出すと、オートボットにより捕らえられたコソ泥、ニノ・セクストンにスーツを与える。

サムダック博士が開発途中だったターボブースターを、サリがバンブルビーに持ってくる。早速それをつけてくれとラチェットに頼むバンブルビーであったが、ラチェットはそれを拒否。その頃ニノは超スピードで走り回る、怪盗ナノセクとして盗みを働いていた。パトロールに出ていたバンブルビーやプロールが相手をするのだったが、その超スピードの前には、手も足も出ない。

メガトロンはナノセクに対して、デストロニウムの輸送を依頼する。オートボット達はナノセクの暴走を止めようとするのだが、やはり彼のスピードの前には太刀打ちできない。更には命令を無視してターボブースターを装着したバンブルビーが、皆に迷惑をかける始末。

このままではデストロニウムが大爆発を起こすと知ったオートボット達。バンブルビーが機転を利かせ、ナノセクと追いかけっこを繰り広げる。他人よりも早く時間が流れるナノセクは、いつの間にか老人となってしまい、とうとう走れなくなってしまった。残ったデストロニウムもバンブルビーのアイデアで、宇宙へと放り出す事に成功するのであった。

解説

アニメイテッドの最大の特徴は、人間ヴィランとトランスフォーマーが戦ってしまう所、というのは以前も書きました。今までに登場した人間ヴィランでは、アングリー・アーチャーには苦戦はしていませんでしたが、メルトダウンにはかなり苦戦を強いられていました。最もメルトダウンは、人間とは言いがたいモンスターに変身していたのですが…。そして今回登場のナノセクは、超スピードで動けるようになるサイバースーツを着てはいますが、ごくごく普通の人間です。そんな普通の人間が、トランスフォーマーと対等に戦っているという場面は、やはり本作を最も良く象徴していると言えるでしょう。

今回はバンブルビーが主役の話で、更にターボブースターという彼用のパワーアップパーツの話なのですが、ラストシーンなどを見てもらえれば解るように、単純に「パワーアップして事件解決」というストーリーになっていないのが、特色だと言う事が出来ます。そしてそれはシーズン2の、サムライプロールのエピソードでも、引き続き描かれる事になるのですが…。

#9

「Along Came a Spider」

Written by : MARTY ISENBERG
Art Direction : DERRICK J.WYATT
Directed by : IRINEO MARAMBA , MATT YOUNGBERG , YUTAKA KAGAWA

あらすじ

今日はハロウィン。サリはバンブルビー達と一緒にハロウィンの準備を進める。オプティマスは、ふと目に止まった巨大なクモの飾りを見て、過去の事を思い出していた。

士官学校時代、オプティマスはセンチネルそして女性型トランスフォーマーのエリータワンと共に、立ち入りを禁じられた星へ、やって来ていた。噂ではこの星には、古いディセプティコンの宇宙船が眠っているらしい。消極的なオプティマスを尻目に、センチネルとエリータワンは冒険を始めるのであったが、三人は地下洞窟へと落ちてしまう。そこには巨大なクモが巣くっていた。エリータワンの、他人の能力をコピーできる能力などを駆使して、三人はクモを撃退していくのだが、多数のクモの前には撤退を余儀なくされてしまった。

デトロイトでは、サリとバンブルビー、バルクヘッドがハロウィンのお菓子をもらいに出かけていた。しかしその途中でバンブルビーが、巨大なクモを発見する。それを聞いたオプティマスは、早速三人の下へと急行するのであった。

過去。オプティマスは大量のエネルゴンを発見するが、そこには無数の巨大クモがいた。オプティマスはエリータワンと協力すると、エネルゴンを爆発させ脱出を試みる。しかしその時、エリータワンのコピー能力が機能を停止。助けようとするオプティマスのワイヤーも空しく、エリータワンは大クモの中へと落ちてしまい、生命反応が途絶えてしまった…。

現在。バンブルビーの見た巨大クモの正体は、ディセプティコンのブラックアラクニアであった。彼女はバンブルビーとバルクヘッドを有機毒で麻痺させると、サリの持つ鍵を言葉巧みに奪おうとした。しかしそれをオプティマスに阻止されたブラックアラクニアは、サリを攫うとデトロイトの街へ逃げ出した。

ブラックアラクニアに追いつき、サリを助け出すオプティマス。ブラックアラクニアの正体は実は、エリータワンだった。あの後エリータワンはクモの能力を吸収しようとしたが、逆にクモの毒にやられてしまい、有機物と融合した醜い体となってしまっていた。彼女は自分を見捨てたオプティマスとオートボットを恨み、ディセプティコンに与しているのだった。そして彼女を元のロボットの体に戻すには、オールスパークの力が必要なのだ。ブラックアラクニアはサリから鍵を奪うと、自分の体に挿した。周囲の有機体からエネルギーを奪うウィドーであったが、それは逆に彼女を苦しめる事となった。もはや彼女の体からは有機体は切り離せなくなっていたのだ。苦しむウィドーを救ったオプティマス。オプティマスはウィドーに、オートボットに戻るよううながすのだったが、ウィドーはそれを拒否し、闇夜へと消えていった。

こうしてハロウィンは終わった。オプティマスはエリータの事を思い、一方のブラックアラクニアは、月を見ながら一人涙を流すのであった…。

解説

今回はオプティマスの少し切ない過去話です。個人的には「アニメイテッド」で一、二を争う傑作エピソードだと思っています。

カートゥーンではハロウィンは、もはや定番のネタの一つなのですが、日本では昔ほどでは無いにせよ、まだまだハロウィンには馴染みが薄いと言えます。簡単に説明すると、お化けとか幽霊が出てくる、と言われているお祭です。子供達はお化けの仮装をして近所の家に行き、「Trick or Treat?(イタズラかお菓子か?=お菓子くれないとイタズラするよ)」と言って、お菓子をもらって回ります。そう考えると、オプティマスに取っての「死んだはずの人=エリータワン」がやって来てイタズラをしていったわけですから、ハロウィンにふさわしいエピソードだと言う事が出来るでしょう。

そのハロウィンの仮装でバルクヘッドが被っていたのは「Fumigation Tent」と呼ばれる物です。簡単に説明すると倉庫や家などから虫を駆除するためにかけるテントで、その中で殺虫剤を焚いたりします。バルクヘッドの足元から虫が落ちてきたのは、そういう理由なのですね。

仮装と言えば、バンブルビーはドラキュラに。サリはオプティマスに仮装して、楽しませてくれます。こういう遊び心を忘れないのも、本作のいい所ですよね。

#10

「Sound and Fury」

Written by : HENRY GILROY
Art Direction : DERRICK J.WYATT
Directed by : BEN JONES , SHUNJI OGA

あらすじ

メガトロンは自らの新しいボディとするために、一体のロボット=サウンドウェーブを作り出す。そしてサムダック博士を騙し、サウンドウェーブをサリの誕生日のプレゼントにするよう仕向けるのであった。サリの誕生日パーティーが開かれるが、やってきた子供達は、サリよりもオートボット達に夢中になってしまう。バルクヘッドはサリを喜ばせようと奮闘するのだったが、例によって失敗ばかりしてしまう。そしてサリは、サムダック博士から送られた、サウンドウェーブに大喜び。バルクヘッドはそんなサリに、誕生日プレゼントを渡しそびれてしまうのであった。

サリはすっかりサウンドウェーブに夢中になってしまい、鍵を使いあれこれとバージョンアップを施す。しかしそれはメガトロンの仕掛けた罠であった。サリが鍵を使う度に、サウンドウェーブはそのボディを進化させるように作られていたのだった。そしてメガトロンは、サリとバルクヘッドの仲を引き離すよう、電話音声を改竄したり、バルクヘッドにわざとサウンドウェーブを攻撃させるよう、仕向けるのであった。

サリとバルクヘッドの仲は、完全に引き裂かれたかに見えた。メガトロンは己の計画を実行に移すべく、サウンドウェーブに命令を下すのであったが、サリが鍵を使いすぎてしまったために、サウンドウェーブに「自我」が芽生えてしまった。メガトロンはそんなサウンドウェーブを言葉巧みに騙すと、オートボットと戦うよう仕向けるのであった。

他のロボット達と融合し、進化を遂げるサウンドウェーブ。デトロイトの街は、サウンドウェーブに操られたロボット達で、大パニックになってしまう。オートボット達が出動するも、サウンドウェーブの能力により、ピンチに陥ってしまう。しかしバルクヘッドが、サウンドウェーブに近づくと、彼を破壊。囚われていたサリを救出し、二人は仲直りするのであった。

解説

トランスフォーマーにおける名キャラクターの一人、サウンドウェーブの登場です。アニメイテッドのサウンドウェーブは、自動車に変形するのですが、ロボットモードの姿は初代のものを大きく意識しており、またその本体の部分は初代同様にカセットレコーダーに変形します。更に音声も初代を意識した、というかそのままのエフェクトがかけられていて、「これぞサウンドウェーブ!」というキャラクターになっているのが、大きな特徴です。

冒頭に登場する悪役は、プロフェッサー・プリンセスという、オモチャを武器とするキャラクターです。彼女もデトロイトに元からいた、人間のヴィランなのですね。

今回の誕生日パーティーのシーンで、サリが他の子供たちから嫌われている事がうかがえる描写があります。何気ないシーンなので見逃しがちですが、実はこれは後々のストーリーに絡んでくる、重要な伏線でもあります。

サリがぶらさがった恐竜の人形を、目隠しをして棒で叩こうとしているシーンがあります。これはピニャータと言って、人形の中にはお菓子などが詰め込まれています。元々はメキシコの風習だったのですが、最近ではアメリカにも浸透してきたようで、パーティーなどの席で、良く行われています。ここでポイントなのは、ピニャータが「紫色の恐竜」の形をしているということ。そう、「ビーストウォーズ」のメガトロンなのですね。

更に今回は、テレビ中継のシーンで入る「しばらくお待ち下さい」の画面に、初代シリーズの人気キャラクター、クレムジークが登場したりと、ファンサービスがいっぱい入っています。

#11

「Lost and Found」

Written by : RICH FOGEL
Art Direction : DERRICK J.WYATT
Directed by : IRINEO MARAMBA , YUTAKA KAGAWA

あらすじ

オールスパークを求めて、ディセプティコンのブリッツウイングとラグナッツが、地球へとやって来た。それを察知したオートボット達は、彼らを迎え撃つのであったが、その圧倒的戦力の差に、為す術が無い。二人の来襲を察知したメガトロンは、ラグナッツのみとだけ連絡を取り、オールスパークの鍵を手に入れるよう、命じる。

戦力の違いを痛感するオートボット達。このまま地球にいては、オールスパークも奪われてしまうだろうし、何より地球人に迷惑がかかってしまう。そう考えた彼らは、スペースシップを修理して宇宙へ帰る事を決意するのだが、それを知ったサリは、彼らとの別れを嫌がるのであった。

スペースシップへと向かうオートボット達を、地球の乗り物をスキャンしたブリッツウイングとラグナッツが襲った。湖の底で激しい戦いを繰り広げる一方、ラチェットとサリはオートボットのスペースシップへと戻っていた。サリは船内でオールスパークにより、メガトロンの幻影を見せられる。そしてやはり地球に残る事を決意したラチェットは、スペースシップにエネルギーを与え、主砲でブリッツウイングとラグナッツを撃退する。

こうしてオートボットは、地球に残りディセプティコンと戦う事を決意した。その頃、バラバラになったブリッツウイングとラグナッツを助け出したのは、あのスタースクリームであった…。

解説

シーズン1も半分を過ぎ、いよいよディセプティコンの本格的な攻勢が始まります。今回から登場するブリッツウイングとラグナッツは、どこかトボケた二人組ですがそのパワーは圧倒的で、いくつかの実戦を潜り抜けてきたとは言え、オートボット戦士達にはまだまだかなわない相手です。今後の事を考えると、確かに宇宙へ帰るというのも正しい選択だと言えるでしょう。

ラチェットがサリと和解するシーンの直前に、ラチェットが「古き友=スペースシップ」について語るシーンがあります。つまり古い友人と新しい友人を対比させているわけですね。また後のエピソードでのスペースシップの活躍を踏まえると、なかなか深い意味合いを持ったシーンだと言う事が出来るでしょう。

メガトロンが連絡を取るのが、妄信的な部下であるラグナッツだけ、というのは「誰も信じない」メガトロンのキャラクターが非常に良く現れている部分ですよね。

オートボットのスペースシップ、そしてスタースクリームの復活など、後のエピソードに繋がってくる部分が多い、非常に重要なエピソードの一つだと言えるでしょう。